そしてまた一人

7/14

82人が本棚に入れています
本棚に追加
/123ページ
野木と同調するように、苦いほどの不安が襲う中、ふと伸びる一本の手…… 「先生~」 手を挙げた生徒に呼ばれ、神田先生は巡回をやめて、その生徒のもとへ向かう。 俺はただ、前の方の席のやり取りを、食い入るように見ていた。 「…………」 「…………」 何か話しているようだが、聞き取ることが出来ない。 チョークを握り、立ち尽くしていた野木が、驚いた表情で振り返るのは、何とか確認出来た。 「野木、矢島と代われ」 神田先生のその発言に、クラス中の様子が一転する。 それもそのはず。 こんな異例なことは、かつて一度たりとも起こったことがなかったのだから。 それに、矢島といえば、三グループある男子のグループの、一グループをまとめる…… いわば、リーダー格の男子だ。 クラスで有名といっては変だが、他に言いようがないので、有名にしておこう。 それはともかく…… どういうことだ……? 手を挙げた男子が、矢島だということは見ていたが、まさか矢島と野木が代わるなんて……… 矢島と神田先生…… どんな会話をしていたのだろうか。 それはわからないが、結果的に野木が助かったことになる。 ……いや、矢島が助けたのか……? ……まさかな  
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加