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野木と同調するように、苦いほどの不安が襲う中、ふと伸びる一本の手……
「先生~」
手を挙げた生徒に呼ばれ、神田先生は巡回をやめて、その生徒のもとへ向かう。
俺はただ、前の方の席のやり取りを、食い入るように見ていた。
「…………」
「…………」
何か話しているようだが、聞き取ることが出来ない。
チョークを握り、立ち尽くしていた野木が、驚いた表情で振り返るのは、何とか確認出来た。
「野木、矢島と代われ」
神田先生のその発言に、クラス中の様子が一転する。
それもそのはず。
こんな異例なことは、かつて一度たりとも起こったことがなかったのだから。
それに、矢島といえば、三グループある男子のグループの、一グループをまとめる…… いわば、リーダー格の男子だ。
クラスで有名といっては変だが、他に言いようがないので、有名にしておこう。
それはともかく……
どういうことだ……?
手を挙げた男子が、矢島だということは見ていたが、まさか矢島と野木が代わるなんて………
矢島と神田先生……
どんな会話をしていたのだろうか。
それはわからないが、結果的に野木が助かったことになる。
……いや、矢島が助けたのか……?
……まさかな
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