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…………戸惑ってばかりで、今までのどの授業よりも、長く苦しく思えた数学の授業が、ようやく終わりを告げた。
結局、あの後。
見事に、矢島の回答は正解し、野木は何もしなくて済み、神田先生が機嫌を損ねるようなことはなかった。
何もかもが、めでたくホッとするようなことなのに、俺の心は晴れていなかった。
たった一つの感情が、心という深く暗い迷宮の中でさまよい……
それを追うようにして、いくつもの感情が混ぜ合わさり、俺自身が戸惑ってしまうほど、訳が解らなくなっている。
今日の教室は、異例な出来事が起こりすぎだ…
もう何も起こって欲しくない。
最初の異例はよかったのだが、さっきの異例は今でも俺を狂わせている。
こんなことがこれ以上起こったら、身も心も持つはずがない。
「西川~」
三度目の呼びかけ。
しかし、この声は野木ではない。
この声は………
「矢島……?」
声のするほうを向いてみたら、なぜか矢島が俺のほうへと向かって来ていた。
「西川。あの松井の小説で、西川の親友役だっけか? 俺にやらせてくれねぇか?」
え……
あの矢島が、俺の親友役……?
こんがらがっていた思考回路は、さらに絡み合ってしまい、もはや解読は不可能だろう。
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