そしてまた一人

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矢島と今まで話したことなんて、皆無に等しいはず…… それは、互いの立場からも歴然だった。 矢島隆一というこの男は、クラスの男子をまとめている程の人物だ。 運動神経、成績…ともに優れているのに、真面目キャラというワケでもなく、それなりに軽くちゃらさも入っている、まさに完璧としか言いようがない男子なのだ。 俺のようないじめられっ子と、神のような矢島とでは、親友としてあまりに釣り合わなさすぎる。 誰かに言われるより、俺自身が一番理解し……痛感していた。 「親友役の名前、何ていったっけか?」 「…赤城 耀平…」 「そう、それだ! んじゃ、よろしくな、憂」 俺が返事をする前に、耀平が決まった矢島は、次の授業である音楽のため、移動教室に向かった。 ………取り残された俺は、ただ呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。 「西川くん? 次、音楽だよ? はやくいこ?」 気付けば、教室内には野木しかおらず、ホントにし~んとしていた。 慌てて教材を取り出し、教室を後にする。 「野木……」 「ん?何?」 今まで、一緒に移動教室をする連れなんていなかったから、とても新鮮に思える一時。 一応、野木に報告しとかなきゃな……  
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