そしてまた一人

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「その……親友役……出来た……」 うまく言葉がまとまらず、途切れ途切れになってしまったが、伝わってくれたはずだ。 「………矢島くん………?」 …! 「何で……」 知っているんだ……? まで言いたかったが、俺の口はそこで止まった。 矢島の名前を口にした、野木の悲しげ……いや、儚げな表情に、そこまで聞くことをためらわずにはいられなかった。 「……西川くん」 声が重い。 いつもの明るい野木の声とは違い、深刻げな声で俺を呼ぶ野木。 「何だ?」 「………いざとなったら、助けてね………?」 …!? どういう意味だ……? 「あ、音楽室だよ」 いつの間にか、目の前には音楽室のドアがあり、訳がわからぬまま、俺は中に入っていった。 「あ、おせ~ぞ憂」 音楽室の席に座り、相変わらず役名で俺のことを呼ぶ矢島。 矢島グループの男子どもが、不思議げに矢島を見ていた。 どうやら矢島は、俺の親友役に立候補したことを、誰にも言っていないようだ。 俺はとりあえず、なぜかニヤニヤしている矢島を無視し、自分の席へとついた。  
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