そしてまた一人

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……そういえば、俺は矢島に殴られたり、絡まれたりはしたことがなかった。 会話をするのも、初めてのことか…… そう思うと、何だか矢島が、他の男子とは何かが違ってるように見えてきた。 矢島とはこれからも、話し合えていけるかも知れない…… そんな淡い期待がうまれてきていた。 「おい、隆一。何でこんな奴と話してんだよ。こっちこいよ」 矢島といつもつるんでいた男子が、訝しげな目で俺を見ながら言った。 矢島…… 俺は内心、不安でたまらなかった。 信じかけていた矢島という存在が、目の前から消えてしまうと。 先程までの矢島が失せて、またいつもの矢島に戻ってしまうと。 「……てめぇらとの馴れ合いは飽きたんだよ。それに、憂は俺の親友だ。わかったら二度と近くに寄るんじゃねぇ」 そう言いながら、俺の肩に手を置く矢島。 驚き以外の感情が何も出てこなかった。 さっき矢島が言っていたことは本当で… 矢島が俺の親友…… もはや異例の出来事どころじゃない。 初めて出来た同性の友達が、元クラスの男子リーダーなのだから。 心の底から湧き出る喜びと共に 一つの不安が浮き出てくる。 「夏の雪」が終わったら…… 矢島と俺はどうなるんだ……? 遥か先の不安を胸に秘めながら 俺は安堵の気持ちで、心の中でそっと呟いた。 友という存在がまた一人……  
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