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「高校の時…、親友だった奴に刺された傷です。」
何時ものような声じゃなく、重く切ない声だった。
「そいつ…、薬やってて錯乱状態に陥って、わけわからなくなって、オレの事…。」
「すまん。もういい…。」
伊丹が遮る。
「あいつを助けられませんでした。痛くて、痛くて…。動けなくて。目の前が真っ暗になって…。」
遠くを見つめ、尚も芹沢は続ける。
「もういい。芹沢、悪かった。無理すんな。」
三浦が言う。
「いいえ、聞いて下さい。気がついたら、あいつは飛び下りてました…。オレは止められなかったんです。痛い、痛いって蹲って…。助けられなかった。」
芹沢が脇腹を押さえた。
「オレ、弱くてかっこ悪くて…。」
三浦が芹沢の肩に手を置く。
「それが、お前の決意か。」
「はい…。」
静かに芹沢が答えた。
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