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「ねぇねぇ美代子(みよこ)」
「どうしたの七海(ななみ)」
――私は家に帰り着くまでの暗い夜道が嫌いだ。
「私の家までついて来てぇ~お願い~」
甘え声で迫る彼女は15歳。
同じ学校の同級生。性格は見ての通り甘えで怖がり。
「いやよ」
彼女の家までついて行くと私が家に帰り着くのが遅くなる。
それに帰りは一人。
私だって夜道を一人で帰るのは怖い。
「お願い! ね、おねが~いっ!」
彼女のしつこさに私は負けた。
結局 私は七海の家まで渋々ついて行く事になったのだ。
「ホント七海って怖がりだよね」
「だってお化け苦手なんだもん・・」
「私だって苦手よ。言っとくけど私は帰り一人なんだからね!」
不満も諸々、少しきつく言った事で七海は俯き落ち込んでしまっている。
まあ悪いなんて思わない。
彼女のわがままに付き合ってあげているのだから。
「ごめん。じゃあさ、今晩家に泊まっていかない?」
突然な七海の提案。
少し考えた後 私は家に帰るのも面倒だと思い、七海の家に泊まる事にした。
七海の家は小綺麗な住宅街の一角にある。
要はお金持ちだけが住める高級分譲マンションに七海は住んでいるのだ。
エレベーターで昇ること35階。
扉が開くと、すぐ目の前が玄関になっている。
七海が扉を開けると優しい表情を浮かべている女性が立っていた。
「お帰りなさい」
「ママただいま!」
私は軽く会釈をして七海の部屋へと向かった。
しばらく他愛のない会話を楽しんでいると、扉を数回ノックする音が鳴る。
ゆっくり開いた扉の先には七海のお母さんがジュースを乗せたトレイを掲げていた。
「いつもありがとうございます」
「いいのよ。また七海が一人じゃ怖いからって・・そう言われて付いて来たのよね?」
問いに私は一度頷き半分作った笑顔で返した。
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