あいのり

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あいのり

「君、どうして死んだの?」 高橋が言った。 暫くの沈黙の後、 「突き落とされたんです」 男は答えた。 「誰に?」 高橋が聞いた。 「実は……」 男は高橋に近付き、耳打ちで答えた。 その瞬間、高橋の顔色が変わった。 「それ、本当?」 「はい。これが証拠です」 男は右腕を高橋に見せた。黒い服を着てた為に分かりづらく今まで高橋は気付かなかったが、右腕に切り傷があった。 「この傷、間違いないね」 高橋は男の切り傷に手を当てた。 「痛かったでしょ」 高橋が手を退かすと傷はなくなっていた。 「凄い……」 男は傷があった場所をさすった。切れていた服までも直っていた。 「これでも寺の人だからね」 高橋は笑顔で言った。 「それならこの傷もお願いします!」 男は左腕を出した。右腕と同じ刃物で付けられたらしい傷があった。 高橋は左腕に手を伸ばし、途中で止めた。 高橋が鈍すぎたのか男が上手く隠していたのか、よく見れば男の両足や胸や腹などには沢山の傷があった。 「突き落とされた?」 無意識に高橋は言っていた。 「切り刻まれた後にです」 男は無表情で答えた。
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