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風が哭く。蹴った石が道の真ん中で、死んだようにコトリと音を立てて止まった。転がることをやめた石は、道の真ん中でその景色と当たり前のように同化している。
和枝は大きく息を吐いた。それを追い掛けるかのように、古く建て付けの悪くなった枝折戸が甲高い悲鳴をあげる。
「ただいま…」
落ち葉だらけの庭に、ぬるい風が走る。
いつも擦りよって来るはずの猫がやって来ない。
「にゃあ…」
猫が鳴いた気がした。和枝を追い掛けてきた月が荒れ果てた庭を淡く照らす。
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