序章『咆哮』

2/3
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
其処は戦場だった。 「ひっひっひ、クァァヒャッヒャァァァ!」 一人嘲笑う者がいる。 戦場を見渡して愉悦に浸っているようだ。 従者が戦況を報告するべく走り来て跪く。 「陛下、戦は我らの有利に運んでいます」 「クハハッ! そうか。強靭な竜人族といえど、神との契約に縛られている者共なぞ脆いものよな」 従者がそれに追従し、恭しく頭を下げる。 「は、これも陛下の御偉光の賜物かと」 「当然よ!」 ニヤリと、陛下と呼ばれる男が笑いながら応える。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ この世界はとある宇宙に浮かぶ、とある惑星。 居住に適するこの星の名は…… 【ガイアード】 そう呼ばれている。 そして今、戦争をしているこの地は中央大陸【マーレイア】。 この世界には幾つかの種族が暮らしている。 【人間族】【竜人族】【獣牙族】【翼鶯族】【魔人族】【水棲族】【妖精族】 この七種族によって世界は運行されている。 一応、棲み分けされているものの時折こんなぶつかり合いが生じているが、大抵の場合は人間の方に問題があった。 この戦争もその一つ。 【狂王】アルスハイド。 【アルスハイド・ソレス・マーレイア】による一種の侵略行為だった。 「何故だ? 何故このような事が許される! 神よ、我々は契約に応じ人間族に土地を明け渡した。 なのに……」 人に似て非なる存在、竜人族の長たる【魔竜王ファフニール】が嘆き涙を流し、そして咆哮を天に向けて高らかに上げた。 「ウオォォォォォォォォォォォォォォォーーッ!!」 それは……戦場という名の狂気に響く魂の雄叫びだったという。 .
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!