第二章『旅立ち』

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広大な森。 此処、ルクセンブルク領 『アーリアの町』の北にある森は昔『死者の森』とも呼ばれていたが、現在は本来の『聖者の森』と呼ばれる。 「スーーッ・・・・・ヤッ!」 ズシュッ! 気合いの声と共に切り裂く音がする。 少年が大猪を狩った音、剣で肉を裂く音だった。 「ようし、今日の獲物は久々の大物だ。 パティ姉喜ぶだろうな。」 意気揚々とする少年は猪を担ぐ、というよりは引きずりながら家に戻る。 「ただいま、パティ姉。」 それを迎えるのは年の頃20代の女性で、少年から姉と呼ばれる通り彼にとって彼女は姉のように接していた。 「お帰り、セイル。」 洗濯物を干していた女性が『パティアル・ルクセンブルク』 このルクセンブルク領の領主『エムアル・セディ・ルクセンブルク』の一人娘だった。 「今日の獲物は大きいよ。」 「ホントだ。 じゃ、いつもの様に捌いたら町に行こっか?」 そして猪を狩っていた少年の名前はセイル。 『セイラード・ヴァイス』 という。 セイルは猪を捌き始める。 ・・・ 「よし、こんなもんかな?」 猪を捌き切るセイルは肉と毛皮と牙や骨に分ける。 その手並みはかなり慣れたものだった。
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