表ヒロミチ閣下の矢八

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 表ヒロミチは中学三年生。受験を間近に控えた、忙しい時期の筈である。  だが、ヒロミチは勉強していなかった。 「別に東洋でいいさ……」  と思っていたからだ。  自分の学力なら東洋でも楽々入れる。事実だが、なんともやる気の無いこと。  それでも、本人がそれでいいと思っているのだから、それでいいのである。  今の季節は冬。年が明けてすぐの時だった。  ヒロミチは、友人の西山ショウタ、萩ユウキらと共に夜の町を閣歩していた。  定期パトロールである。  この三人は学生であると同時に、兵庫県警特別措置課独立行動小隊『不良キラーズ』の隊員達であった。  彼等がこなす仕事はひとつ、町行く不良どもを片っ端からリンチすること。例え何も悪事を働いていなくてもである。  不良とおぼしき人影を見付けたら、とりあえずチェーンソー片手に突っ込んで行くのである。  なんと傲慢な人達なのだろう。  だが、そのおかげで街から不良の姿は消え、住みよい街が作られた。  しかし、その安息も束の間、強大な反抗勢力が立ち上がった。  総長クワマンを頂点とする『レボリューショナルバッドボーイズ』。  『不良キラーズ』三人に対し、『レボリューショナルバッドボーイズ』はおよそ五十。絶望的戦力差だ。  だが、表ヒロミチはクワマンに言った。 「お前達のやっていることは、It's テロリズム」  なんと勇敢な言葉か。まさに正義である。  三と五十が対峙する中、闘いのゴングが夜の町に鳴った。  
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