姫と朱の物語

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そのあともお姫様は、もっとたくさんのソレを求めて色々なところにナイフを当てたわ。 でも何処も、満足するのは最初だけだったの。 それでね、貧血でかなりお姫様が衰弱してきた頃、お姫様は首筋にナイフをおし当ててみたんですって。 そうしたらね、求めていた赤が一気に噴き出したの。 辺りはその色に染まったわ。 真っ赤よ。 何もかもぜーんぶ、真っ赤なの。 とうとうお姫様は死んでしまったわ。 でもお姫様は最後、ちっとも恐くないし、幸せを感じていたんだって、御祖父様が遠くを見たの。 それこそがお姫様の求めていた世界だったんですもの。 でもね、彼女が眠りに落ちるその時、真っ赤になった部屋はまるで、自分も道連れになるとでも言っているように少しずつ黒くなっていったんだって。 とっても恐くて悲しいと思うけれど、その何十倍も素敵だと私は思うわ。 お姫様は探し求めた物を最後に見つけて、手に入れられたんだから、とっても素敵じゃない? 私がそう言ったら、御祖父様は驚いていたわ。 でも御祖父様は言ったの。
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