花と刺の物語

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ある所に、それは綺麗な花が咲いておりました。 その花は取り分け大切に育てられた訳ではありませんが、何の変哲もないその庭を、鮮やかに彩っていました。 人々はその花に大層魅せられておりましたが、その花を摘み取ろうとする者は誰一人とおりませんでした。 何故なら、その花には大きくて鋭い刺があったのです。 そのせいで、花はいつしか見向きもされなくなってしまいました。 それでも最初のうちはその美しさを一目見ようと訪れる者や、噂を頻繁に耳にしたものですが、今ではそれすらもおりません。 花は首をうなだれ、ふさぎ込んでしまいました。 (ねぇ、何故) (何故貴方は、こんなにも私を苦しめるの?) 花は毎日を泣いて暮らし、綺麗な紅色だった花弁も真っ白になり、やがて自らの蔓でその花弁を覆い隠し、人々の目に触れぬようにして、やはり毎日泣いて過ごしておりました。 (いっそ、早く枯れてしまわないかしら…) 花はただ悲しみにくれます。 しかし刺の方とて、花を虐めている訳ではありません。 こちらもまた、悲しみに暮れておりました。
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