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(お願いだから泣かないで、)
刺は花を守るという、その役目を全うしていただけなのです。
それだけではありません。
刺は、花に恋焦がれておりました。
だからこそ守りたいと強く思うのです。
それは、生まれた時から決まっていたことであり、全ての刺が、自らが座している花に恋をしてしまうという、何とも残酷で羨ましい、ロマンティックな運命を持っているのでした。
けれど、花と刺はいつまで経っても結ばれることはありません。
(-―ねぇ、お願い…)
(僕は、貴女を守りたいだけなんだ。)
(貴女が、好きなんだ。)
いつの間にか、その声は花に届いておりました。
お互いに声を聞くことすらままならなかった二人が、とうとうその強い想いで繋がったのです。
花は蔓を解き、もう一度その美しい姿を太陽の下に現しました。
ずっと泣いていた花は、いつの間にか白を通り越して、綺麗に透き通る花になっておりました。
そしてまた、花は人々に愛されるようになったのです。
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