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大変珍しい花だと、厳重に保護されるようになり、毎日たくさんの人が花を見に訪れ、褒め讃えました。
花は幸せでした。
以前とは打って変わり、毎日笑顔で過ごすようになり、哀しかなかった花に喜怒哀楽が戻ってきたのです。
しかし刺の笑顔は何処か悲しげでした。
何故なら、花が人々に愛され、花が安全になってしまえば、刺の役目はもう終わりなのです。
役目を終えた刺はやがて枯れ、無くなってしまいます。
花はまた泣きました。
しかし時とは残酷なもので、待つこともせずやがてその時がやってきます。
けれど刺は、こんな時だというのに初めて本当に心から笑っていました。
(ありがとう、僕の為に泣いてくれて。)
(ありがとう、そこまで僕を想ってくれて。)
刺は、花が自分の為に泣いてくれたのが本当に嬉しかったのです。
そうして、刺は静かに地面へと落ちて行きました。
花はしばらく悲しみに暮れます。
それから、花は淡い青にほのかに色づいた、やはり透明に透き通る花弁を付け、誇らしげに咲き続けました。
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