姫と朱の物語

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それはね、昔昔のお話なの。 と言ってもほんの100年程前の事なんだけれど。 人間っていうのは本当にちっぽけな生き物だから、たった100年だって遠い昔になっちゃうんだって、御祖父様は言ってたわ。 それでね、遠い昔のある国に、一人のお姫様がいたんですって。 そのお姫様はとても優しい人だったのよ。 でもいつも悲しそうな顔をしていたわ。 どうしてかしら? 私は御祖父様に訪ねたわ。 そうしたらね、少し柔らかい笑みを浮かべて御祖父様は言ったの。 お姫様は、退屈になっちゃうんですって。 色々なことがあるから生きているのは楽しいんだよって御祖父様は言ってたわ。 今ではその意味もわかるけれど、御祖父様にその話しを聞いたその時は、説明されたってやっぱりわからなかったわ。 私はそのお姫様はどうしたの、って御祖父様に近づいたの。 御祖父様はまた、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めたわ。 ある日ね、お姫様は見てしまったんですって。 偶然通り掛かった広場で罪人が処刑されるところを。 その時に初めて、お姫様は血を見たの。
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