姫と朱の物語

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大事に育てられたお姫様だったから、自分はもちろん、他人の血だって見たことなかったのよ。 それでね、笑ったんですって。 お姫様は言ったわ。 「なんて…なんて綺麗なの。こんなに綺麗なものがあったなんて。こんなに綺麗な赤、ルビーにだって見たことないわ。」 彼女は目を輝かせて、夢中になったのよ。 だってそうでしょ? 林檎の赤も夕焼けの赤も、炎の赤も、宝石だって血の赤は出せないもの。 よく似ているけれど、違うの。 そう、ちょうど私と貴女みたいにね。 それでね、その日からお姫様は、ソレを探し続けたの。 私はすごく不思議だったわ。 御祖父様はね、彼女は何も知らなかったから、人間を傷付ければソレが手に入るだなんて、知らなかったんだって教えてくれたの。 だからお姫様は、かのフランスの女帝のようにはならなかったのよ。 でもね、ある日突然、それはやってきたの。 お姫様がお散歩に街まで出てきた時に、一軒のお家の庭に、それは綺麗な花を見つけたんですって。 お付きの使用人もその花に見取れていたのね。
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