姫と朱の物語

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お姫様はつい、手を伸ばしていたの。 そうしたらね、その花についた鋭い刺が、お姫様の指に触れて。 その傷口からは、お姫様の探し求めていたモノが滲んだわ。 それでお姫様は気付いたのね。 最初からこうすれば良かったんだ、って。 それからお姫様は変わってしまったんだって、御祖父様は目を細めたわ。 すごく、悲しい目。 お姫様は部屋からあまり出なくなったんですって。 何をしていたのかしら? 勿論、いくらなんでもそれ位解らない程私は幼稚じゃないわ。 お姫様はまず針を取り出して、自分の指にすっと入れてみたの。 真っ赤な血が、小さな丸いカケラになってお姫様の真っ白な指にぽつんと一つ浮かんだわ。 でもすぐにそれでは足りなくなったんですって。 だから今度は、小さな硝子の破片で手の甲に十字架を描いたんだって。 その十字架からは、じわじわとさっきと同じ赤いカケラが、今度は何個か浮かんだわ。 でもやっぱり物足りなくて、次は小さめのナイフを手首にグッと滑らせると、真っ赤な血がツーッとすじになって滴り落ちたの。
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