うらのさかい

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書に読み疲れ眠りに落ちる 幾重もの布を敷きつめた籐椅子 背凭れに頭をひっかけ目を瞑る この躯の主なる脳への貢   贄なる赤き聖水 絶うれば諸根暗鈍とし 瞑ろうとも見え 無きものが見え 其れが己に触れるのが見える 生生しい虚構がはじまる   開いている筈の扉は閉じ 見うるものは在る筈がない妹 壁に埋め込まれた鏡 そこに映るは在る筈がない緑の扉 扉の向うの昏き穴 木のうろの如し 蠢く漆黒 現わるは 長蟲 狐火 法螺貝 総てかたかたと嗤う   妹も嗤う
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