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千緒と天は並んで歩いていた。
天の背には気を失った陸がいる。
「ねぇ…陸の羽根はなくなったけど、角出っぱなしじゃない。
いいの?」
千緒が言うと、天は怒ったように眉をつり上げた。
「俺には角ないから、しまい方なんて分かんねぇんだよ!
それに、羽根やら角やら出してるときは、普通の人には俺たちの姿は見えねぇようになってるからいいんだ」
へぇ、よくできてるんだなぁ、と感心する。
確かに、空飛んでる人とかが皆に見えてたら大騒ぎだもんなぁ。
鳥人間コンテストが、本物の羽根生えた人たちのコンテストになっちゃう。
ってあれ?
「じゃあ何であたしには見えるのよ?」
言っておくが、あたしは天使でも悪魔でもない。
「あーそれなぁ…。
俺もよく分かんねぇけど、ときどきいるんだよ、羽根見えるヤツ。
お前は、めちゃくちゃ希少なケースだけど」
「何で?」
尋ねると、クロロはため息をついた。
「人間ってのは、ごくたまに俺らが見えるけど、触れる奴は少ない。
けど、お前は俺らに触れる」
「……は? そんなことってあるの?
あたし正真正銘、普通の人間よ」
「どうやらあるんだよ。大体お前は普通の人間の枠に入らない」
「何よそれっ?」
「天使でも悪魔でもないのに聖域で育った奴が普通の人間かよ」
そう言われたら、反論できない。
「ショック…」
思わず呟いたあたしを、天はじっと見つめてから大きくため息をついた。
「だいたい、俺みたいな天使様を見て変質者なんて叫ぶヤツがマトモなわけねぇだろ。
天使のご加護だぞ、おら、ありがたく思えや」
「なっ…誰が不良の変質者に感謝するか!
だいたい、不法侵入者に羽根とか輪っかとかあったら変質者以外考えられないでしょ!?」
「お? まだ信じねぇか?
神にチクるぞ、おら」
「態度が悪いってんのよ!!」
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