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ぎゃーぎゃーと言い争いながら歩いているうちに、いつの間にやらここは家の前だ。
鞄から鍵を取り出しドアを開けて天を促す。
「先入って」
「どーも」
天はポイポイッと靴を脱ぎ散らかし、ついでに陸の靴も脱がす。
「あっ、並べなさいよ!!」
「仕方ねぇだろ?野郎抱えてると重いんだよ」
天は舌打ちしたが、素直に二人分の靴を並べた。
「とりあえず二階に寝かせるわ。こっち来て」
千緒も靴を脱いで彼の前に立って歩く。
階段を上がってすぐの部屋に彼らを入れる。
「そこに寝かせといて。他の部屋の様子を見てくるから」
部屋を出ようとする千緒の背中に、天が尋ねた。
「ここは誰の部屋なんだ?」
「私の部屋よ。今すぐ使えるって分かってんのここしかないから」
千緒が答えると納得したように天は頷く。
「ああ、やっぱりか。お前らしい部屋だなぁ」
「どういう意味よ」
「悪い意味じゃねぇよ。いい部屋だって言ってんだ」
そう言われて、悪い気はしない。
「それはありがとう」
千緒はニコッと微笑み、そして部屋を出ていった。
天はしばらく呆然としていたが、やがて思い出したように、まだ気を失っている陸の頬を引っ張った。
「おっ前…損したなぁ。
千緒、笑うと可愛いんだぞ」
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