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■灰色の世界
詩
「私たちは無の中で、抗うことを覚えて創られた生物だと誰かが言った。それは人と認める事のない無限の家畜として捕らえられた言葉。誰が私たちを創れ、とお願いをしただろうか。ああ、こんなにも痛くて辛いものが世界だというのなら、いっそいっそ消えてしまえば良いのに。私たちは無から有に変える力など持ち合わせてはいないのだから」
琴言
「本当に持ち合わせてはいないのですか?」
詩
「もちろん、それが人間が家畜とさえ罵られる理由には充分だろう。例えば世界で生物はどんどん絶滅というなの終わりが近づいているように、何も変えられないように、私たちには言葉があったとしても何も変える事は出来ないのだ。それなのに抗うという事を覚えている。生きようと手を伸ばす、だがこの有様はなんだ?この流される涙と血は何だ?結局の事、抗うという知識をインプットされた――」
琴言
「貴方の意見が変わっていってるわ。ねぇ、それなら見てみましょうよ、抗うことを覚えたその生物が、抗い続けたらどうなっているのか、見てみなさいよ」
詩
「見る?どうやって……」
琴言
「静かに。ほら、ゆっくりと瞳を瞑って見て。そうすれば見えるわ。無から有へと変わっていく世界の風景を、世界の中を、世界の中の新たな世界を」
琴言
「Alphabet-無から有への旅-」
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