春のこと

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その頃の私はいかにもがり勉といった雰囲気の暗い生徒だった。 中学一年のときに男子とウマが合わず、いじめに遭った。冬から春にかけては不登校のまねごともした。 自分が恵まれていたのだということに気づくのは何かを失ってからだ、ということを身をもって体感し始めていた。 ――そして、家にお金を入れてくれるだけでも、父親がいるだけ幸せなのだ……と、その日家に帰った私は痛感することになる。
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