ファースト・パート

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 平日の夕方にしてはやけに客が多い。暇な奴らばかりだ。 「まずは、今夜に備えて避妊具を――」 「いらん」  いきなり何を口走ってんだこいつは。 「秀一」  無表情なのかそうでないのか解らない微妙な面持ちで、美花が見上げてくる。 「できちゃったら、責任とってくれる?」  頬を染めて上目遣い。  よーし、冷静になれ俺。据え膳を食わぬのも勇気だということを証明せねば。 「前提から確認しようか」  首を傾げる美花。 「俺はね、君とはナニもしないんだよ。解る?」 「ニホンゴワカラナーイ」  美花のほっぺをつまむ。 「あう」 「解る?」 「わはんなーい」  わかんないという言葉が解るんなら十分だろうが。  周りの目もあったので、俺は美花の頬から手を放した。バカップルに見られるのだけは勘弁だ。 「どうだった?」 「何がだ」 「ボクのほっぺの感触は」  んなこと聞かれても。比べる相手がいないから何とも言えないっての。 「秀一の主観でいいから」 「ぷにぷにして気持ちよかったぞ」  ガッツポーズを決める美花。そんなに嬉しいか。 「よかったら今夜ボクの全てを体験しても――」 「しないっつってんだろ」 「じゃあ明日」 「明日ならいいぜ」
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