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「それ、ペアでつけるにしても単体でつけるにしても恥ずかしいんだが」
大の男がハートなんか身に付けられない。
「秀一。よく考えてみて」
「何を」
「さっきボクは、恥ずかしいのを我慢して秀一とくっついて歩いた」
「そうだな」
「だから秀一も恥ずかしいのを我慢してこのペンダントをつけるべき」
「お前もう帰れよ」
あーなんだこりゃ。これはあれか。美花はこのペアペンダントを買うために俺を連れてきたってわけか。受験生のくせによくやるよ。ちょっと頭痛がしてした。
こめかみを押さえたところで、美花がじっと見上げきているのに気がついた。
なんだその目は。
「秀一」
美花は俺と向き合い、両手で手を握ってくる。黒曜石のような瞳から繰り出される上目遣い。
幼い頃から連れとはいえ、こういう女らしい表情を見せられると妙に意識してしまう。
「所詮この世は男と女」
なんだかんだ言って美花は自他共に認める美人なのだ。
「ボクは決めてたよ。昔から」
「……何を」
「何があっても、ボクは秀一だけのもの。身も、心も。身も」
「『身も』を二回言うなよ」
「……明日が楽しみ」
頬を紅潮させて、美花は呟いた。だからやらないって。
そんなやり取りを見ていたのか、レジカウンターからクスクスと笑い声が聞こえてきた。
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