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ふんわりとした微笑みを浮かべて、夏乃さんは俺の顔を覗き込んでくる。
息が止まるほどの美貌。優しげな微笑。ゆったりとした物腰。
まさかこの女……おっとりお姉さんタイプなのか……? だとしたら、大変だ。俺は運が良い。宝くじで三億円が四回当たるくらい幸運だ。
おっとりお姉さんタイプといえば、いまやイリオモテヤマネコクラスの絶滅危惧種。国連による保護の対象である。おっとりお姉さんタイプの保存は、第三次世界大戦勃発の防止よりも優先されるという噂だ。
夏乃さんの価値は何物にも変えられない。
目の前に見える彼女の微笑みは、現代人の荒んだ心を浄化してくれるのだ。実際、俺は現在進行形で浄化されている。
ところが、腕を引っ張られて夏乃さんから引き離された。
「だめ」
美花が俺の腕を抱いて夏乃さんを睨んでいた。
その姿を見て、夏乃さんはそよ風のような笑いを漏らす。
「心配しなくても大丈夫よ。私は美花ちゃんの彼氏さんを盗ったりしないからねぇ」
「ぬむー」
美花は唸りながら、なおも腕を抱きしめる。
美花の胸が予想以上に大きいというのはどうでもいいが、それより俺はいつから美花の彼氏になったんだ? そんな関係になった記憶は皆無だぞ。
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