第一次邂逅前線:ミステリにおける少女の役割

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 人を殺めるなど簡単だ。  人は脆い。拍子抜けするほど簡単に死ぬ。  ナイフで心臓を突けば、はい死んだ。おしまい。  小学生でもできることだ。算数の問題を解くより楽かもしれない。  例えば、近所に殺したいほど憎んでいる奴がいるとしよう。俺が殺すと決断してから、そいつが殺されるまでわずか数分。  俺が決断して、たった数分で死ぬのだ。  こうして考えると、そいつがいかに俺の親切で生かされているかよく解る。  人間は、ひいては生きとし生ける者全ては、常に死と隣り合わせ。蜘蛛の巣のように細い糸の上でつま先立ちをする滑稽な存在。  命とはそんなものだ。  法と良心の枷がなくなれば、人は殺し合いを始めるだろう。  だが、現実にそれはありえない。  人の中には少なからず良心が備わっており、それは決して消えない。それでも悪を働く者も現れて、だからこそ法という強固なフィルターと取り締まる政府の強制力があまねく世の中になる。  良心と法。二重の柵の、どちらか一方が欠けると人は理性より欲望を優先する。  秩序のない自由は混沌、という言葉を聞いたことがある。  結局、外界からの抑制がなければ、人間は自らを律することはできない。自由と束縛は表裏一体。同じものを違う面から見たものに過ぎないのだ。
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