第一次邂逅前線:ミステリにおける少女の役割

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 俺が言いたいことは何か。  それは、結論として殺人は困難だということだ。  人はどうしても、殺した後のことを考えてしまう。警察に追われ、逮捕され、刑務所に叩き込まれるという、最悪のシナリオを。どうにかしてその運命から逃れようと、犯人は知恵を振り絞るが、そうやって逃げられる人間は果たして何人いるだろう。高い検挙率を誇る日本の警察の目を欺こうと思えば、知恵だけではどうにもならない。絶対的な運が必要だ。  たった一人殺すだけに、人生の自由をなげうつ覚悟がなければ、殺人など犯せない。一時の感情で衝動的に殺してしまうなど論外。それこそまさに愚の骨頂。  つまるところ、殺して得るリターンよりも、かけるリスクの方が遥かに大きいのだ。割に合わないこと甚だしい。  だから俺は犯罪などしない。それはバカのすることだ。  俺は、殺人を芸術に昇華させる。犯罪は、捕まらなければ犯罪ではない。  事件そのものを隠蔽するなんて卑怯で陰湿な真似はしない。発覚させ、最大限の証拠と手がかりを残し、チャンスを与える。  その上で、俺は逃げ延びる。間抜けな警察どもを眺めながら、時効の瞬間を迎えるのだ。  それこそ、俺の求める芸術。退屈を打ち崩す、刺激なのだから。
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