ファースト・パート

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 さて、誰を殺そうか。  これは重要な問題だ。まず第一に殺しても俺の犯行だとバレないことが絶対条件だ。ただ、十分条件ではない。殺してもどうでもいいような人間を手にかけても何の感慨もない。どうせなら、俺が望む人間を殺すべきだ。  しかし、難しいな。  殺しても足がつきにくく、なおかつ興奮する相手となると、そうそういない。後者はまだしも、前者を見つけることは容易ではあるまい。  どうしたものか。  とりあえず殺して、後に証拠を隠滅するという手もあるが、それでは俺の芸術は完成しない。行き当たりばったりなど言語道断。それは凡人のすることだ。  だが、そうなると思考が堂々巡りだ。あれもだめ、これもだめ。結局成功の目処は立たない。  そんなことを延々と考え続け、授業の時間は終わりを迎えた。  終礼のチャイムが鳴り響く。クラスメート達はみな早々に教室を出ていくか、机に勉強道具を広げるかのどちら。来月に大学受験を控えた者としては、当然の行動だろう。  哀れだね。どいつもこいつも。そうやって必死に勉強しなければ、自らの望む大学に受からないとは。  推薦で合格を貰っている俺としては、彼らのそれは無駄な行為にしか見えなかった。
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