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街に繰り出すと言っても、地元の学生が行く所は大概決まっている。
駅前の通りにある大型ショッピングモール。他に行くところがないと言えばそれまでだが、ある程度の物品はここに集まるので街中を歩き回るという徒労がないのが魅力だ。
「街を歩くということ自体が楽しい」
というのは美花の談だが、俺はいささか賛成しかねるな。
疲れるだけだ。
「好きな人とならどんなことでも楽しくなる」
これも美花の言葉だが、正直知らんよ。
「秀一冷たい。もっとボクを愛して。愛してるって言って」
「やだよ」
駅からショッピングモールまでの道筋で美花は俺の腕に自分のそれを絡めてくる。いや、別に嫌とか鬱陶しいとかそういう感情は無いが、ただ単純に歩きづらい。
だが、振りほどきはしない。この状態には、歩きにくいというデメリットを打ち消してさらに余りあるリターンを享受できるという素晴らしい利点があるからだ。
俺の腕に柔らかい感触が……いぇい。
「ボク達、いま絶対カップルに見られてる」
「だろうな」
「恥ずかしい」
「だったらやめろよ」
「やだ」
結局、美花が密着した状態のまま、目的地に到着した。
さて何を買いに来たんだか。![image=205100731.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/205100731.jpg?width=800&format=jpg)
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