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そして勢い良くガバリと起き、立ち上がった。
「ヤダっ!一緒に帰る!」
「はいはい、解ったから顔のよだれ拭いとけ。」
春のいかにも興味なさげな言葉に薫は真っ赤になった。
「な……っ!よだれじゃ……っ。」
途中まで言って薫は言葉を止めた。
彼女には、よだれを涙と訂正する勇気が出なかったのだ。
「……ねぇ、僕、ケーキが食べに行きたいな。」
「ふわぁ、お腹いっぱいだよー。」
「当たり前だっ!何個食う気だよ!?俺の財布が痛々しい事になっちまったじゃねぇか!」
アハハ、と薫は軽快な笑い声を零した。
ケーキ屋へ行った二人。
薫は春の『おごってやる。』と言う言葉に釣られて、五個もケーキを食した。
春はおかわり自由なコーヒー片手に薫がどんどんケーキを腹に詰め込んでいく姿を唖然と見守っていただけだった。
そして店を出て、春は酷く財布にダメージを受けるはめになったのだった。
「さーて、次はどこへ行こうかな?」
薫が当たり前のように言う。
手はしっかりと春の手を握り逃がすまいとしていた。
「は、まだ行くのか!?」
「あったり前!さ、行くぞぉっ!」
薫はルンルンと歩いて行く。
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