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その足取りはどんどん人で賑わった場所からはなれた所へ向かっていく。
春が訝しげに思っていた時、二人の目の前には河原が飛び込んできた。
決して綺麗とは言わないが、普通のそれよりは十分ゴミも掃除された川だった。
夕日に照らされ、絶妙な光を反射するそこは人の心に感動や、若干の物悲しさを与える奇妙な光だった。
「川……?」
春がポツリ、呟くのも気にせず薫は土手を滑り落ちた。
格好つけず、正しく落ちたような、そんな降り方。
ガツンと大きめの岩にぶつかり、うぅ……、と呻き声を上げる薫を見て春が目を白黒させる。
「……っにやってんだ、てめぇはっ!」
そうやって、かけ降りて、春は漸く気付いた。
否、また気付いてしまった。
薫の涙に。
けれども夕日を浴びる彼女の涙は
何故か教室で見た、あの寝起きの涙と違いどこと無く悲しくないものだった。
「……あのさぁ、僕。両親を亡くしたんだ。五年程前だから……19歳の時かな。」
「……おぉ。」
春は黙って耳を傾ける。
彼女の最後の告白に、耳を傾ける。
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