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「火事だったんだ。僕が夜、家を抜け出して友達と遊んでる間に僕の家は家族諸共焼け焦げた。その日からだね、僕が探偵を始めたのは。」
淡々と紡がれる言葉。
冷たくも聞こえるその言葉とは裏腹に薫は涙を流し続ける。
「僕、両親が大好きだったんだ。豪快な父さんと、ちょっぴり天然な母さん。それでね、君を見てて、思い出した。」
薫は黙って話を聞く春の頬にそっと触れ、微笑んだ。
春は少し驚いたように肩を揺らすもまるで話を促すように黙って首を傾げる。
「春は、僕の父さんに凄く似てるんだ。僕は……無意識の内に父さんと君を照らし合わせて、父を慕うような感情を恋心だと勘違いしてたみたい、なんだ…馬鹿だよねぇ、はははっ…は、うぅ……っ。」
初めて薫は嗚咽を零した。
そんな彼女の頭を春は優しく撫でてやる。
春の口許には微笑みが浮かんでいた。
「……。俺は、お前の父親代わりにもなれねぇし、彼氏にもなれねぇが。いつでも愚痴でも相談でも聞いてやれる、最高の親友にはなれるよ。」
空気に消え入りそうな小さな小さな囁き。
それはしっかりと薫に届いた。
そしてボロボロと大粒の涙を薫は零す。
「……うぅぅっ!あ、ありがとうぅぅ……っ。」
優しく燃えるような日差しが二人を包みこんだ。
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