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あの日、河原で薫が告白をした日、薫と春は別れた。
それから10年後の話。
「ママぁ!」
「はいはい、佐奈(サナ)は元気だなぁ。」
「早くおじいちゃまとおばあちゃまのお墓参りしよっ?」
「待ってねぇ、パパも来てないし……。」
娘と幸せそうに笑う薫が居た。
もう五才になる娘は少し薫に似た所が見られる。
あれから少し、見た目的にも性格的にも老けた彼女は10年前より少し落ち着いていた。
10年前の少年らしさも無くなり大人の女性としか言い様がないほどだった。
「あ、パパぁっ!」
佐奈と呼ばれた少女が父親らしき存在を見付け、駆け寄った。
薫も彼と、もう一人を見付け破顔する。
「パパ、春もご苦労様。」
「全くだ。毎年の事とは言えども俺も飽きずに墓参りするなんてな。」
そこには嬉しそうに悪口を叩く春が居た。
手にはちゃっかりお供え物が握られている。
「パパさんも気ぃ付けないといつ薫が本性だすかわかりませんよ?」
「アハハっ、ごもっともですね。」
「ちょっと、パパ、否定してよっ。」
三人で和やかに談笑する。
薫と春は結局あれから付き合う事もなかった。
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