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春は昔から女と間違われるのが大嫌いだった。
彼が格闘技を一通り習得しているのは、そのせいだった。
女と言われたら、間違われたら、
速攻で投げる!
蹴る!
殴る!
病院送りにする!
それが春のモットーだ。
それはたった一人の親友以外には通用する春ルールだ。
春の周りに居る者なら最早誰もが知っている。
春とは一見関わりのない、箒持って玄関前をするおばさんだって、禿げ散らかったオッさんだって、名門私立に通う中学生だって、皆々、知っている。
問答無用で、場所など関係無く人を懲らしめていたらそうなるだろう、当たり前だ。
その日、春を呼び出していた少年、時時雨 薫(トキシグレ カオル)も春は本当は投げ飛ばそうかと思っていた。
スラリとした体格、おっとりとした顔つきだが、薫は春より背が高い。
つまり、春からしたら「薫よりも背が低い自分は女らしい顔をした二人を比べた時、より女らしいのは背が低い自分の方だ。」と言う考えに至っていたのだ。
だから告白された時は手が出かけた。
殴りそうだった。
女扱いされたと思ったから。
しかしそれはとんだ誤解だった。
寧ろ、薫はモロに女だったのだ。
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