撃攘

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TBDは低空を全力で飛び、後部機銃を乱射し、やり過ごそうと死に物狂いで抵抗するが、その程度の抵抗で突破できる程、零戦隊の護衛は甘いモノではなかった。 上から下から、左右から。 機銃の猛射を浴びせ、撃墜へと追いやっていく。 なんとか一撃を加えようとしたのか、それとももはや攻撃不可能と魚雷を棄て、後退しようとする機もいたが、いずれにしてもTBDの速度では零戦からは逃れられなかった。 「……敵ながら気の毒になってきますな……あんなに遅くては……」 散を乱し、零戦から逃れようとする敵機を眺め、山口が呟いた。 「まぁね。……だが何故、雷撃機だけで攻撃を……」 「攻撃隊が鈍重な雷撃機だけで編成されていたとは思えません。 見た所、敵の練度は低いようです。進撃途中で編隊が崩れたか、それともどこかで攻撃の機会を待っているのかもしれません。 まだ警戒が必要です」 源田の言葉を受け、山本は空戦の様子を見た。 零戦隊は、雷撃機攻撃のため、ほぼ全機が低空へ舞い降りていた。 低空に。
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