撃攘

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「《日向》より信号!! 『被弾2、至近弾1。飛行甲板使用不能ナレド、戦闘航行ニ支障ナシ』 以上です!!」 「《日向》は火災鎮火後、33駆を護衛にあて、トラックへ後退させる。その旨を伝えてくれ。現在発進中の《日向》所属機は、《伊勢》と《加賀》で収容する」 山本の指示を受け、渡辺が信号発信の段取りを整える。 敵の攻撃はすでに終わっていた。 《日向》からは依然、火災煙があがっているが、付近の駆逐艦からの支援放水を受けている。その甲斐もあり、火災は鎮火に向かいつつある。 「長官、《日向》より意見具申です。『我、戦闘航行ニ支障ナシ。艦隊ヘノ追従ヲ希望ス」以上です 「却下する」 山本は即座に応えた。 「《日向》に言ってやれ。至急後退せよ。それと以後、意見具申は認めず。とな」 信号はすぐに出された。 「なぜ後退を拒んだのでしょう?」 源田が呟いた。 「まだ戦えるから、被害担当艦になって、敵の攻撃を引き付ける役を取ろうとしたんだろう。 だが生憎、俺は部下にそんな役割はやらせん」 「なるほど。鬼の住処の面目ですか。 しかし《日向》がやられたのは痛手ですね」 源田が呟いた。 「痛手?私はそうは思わないね」 山本は言った。 「やられたならば、倍にして、いや何倍にもして返してやればいいさ」
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