撃攘

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陽は西へ沈もうとしていた。 夕日に紅く染められる海原は、今日1日で両軍兵士が流した血を表しているようだった。 《ペンシルバニア》艦橋でキンメルは艦隊の様子を黙って見つめていた。 真珠湾を発した際の威風堂々とした姿は、ない。 隊列は大きく乱れている。 そして数が減じている。 《ペンシルバニア》の姉妹艦(アリゾナ)。 第3任務部隊パイ少将が将旗を掲げていた《ニューメキシコ》その僚艦(アイダホ)。 艦隊中で、もっとも古かった、《ネバタ》《オクラホマ》。 合衆国が保有する、3隻しかない40センチ砲搭載艦の1艦、《ウエスト・バージニア》も姿が見えない。 別任務中? 否。 先に帰還した? 否。 沈んだのだ。 陽も当たらぬ、水底に。 弱敵として侮っていた、日本軍機の攻撃で。 戦艦を沈めることなど出来ぬと考えていた、敵に。
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