撃攘

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司令官、キンメルの栄誉。 アナポリスをトップクラスの成績で卒業後、たゆまぬ努力で順風満帆に進んできた、キンメルの海軍人生。 しかし、海軍はキンメルを決して許さないだろう。 一大敗北を喫した、司令官を。 査問会議の後、降格。そして閑職への異動。いや、下手をすれば予備役に編入されてしまうかもしれない。 復活の機会も得られぬまま。 この戦いも、華々しい経歴を飾る一つの要因となるはずだったのに……。 一体何が間違っていた? どこで歯車が外れた? 様々な想いがキンメルの脳裏をよぎる。 「《カリフォルニア》、 沈みます!!」 見張りの声に、我に返る。 《カリフォルニア》は艦尾を高く持ち上げ、沈もうとしていた。 見ると、まだ動力が一部生きていたのか、スクリュープロペラがゆっくり回転し、宙を切っていた。 これから海底深く、沈み行く現実。 その現実を艦が受け入れられていないかのように。 「………私の居るべき場所は……………あの中だったかもしれない……」 キンメルの呟きは、走り回る幕僚達の耳には届かなかった。
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