4057人が本棚に入れています
本棚に追加
「前衛、第16駆逐隊より入電!!戦艦含む敵艦隊接近、戦闘中!!」
通信兵の報告すると同時に前方より連続して砲声が轟き始めた。
「……奴ら、我々を徹底的に……」
参謀長ハワード少将が呟く。
「……参謀長、残存戦艦の状態は?」
キンメルが静かに口を開いた。
「戦闘可能は本艦と《コロラド》《メリーランド》《ミシシッピ》です。
《テネシー》は舵と機関をやられています、戦闘は無理でしょう。
やりますか?」
「忘れたか?奴らの戦艦は我々のものと比べると優速だ。逃げようとしても、逃げられまい。
40センチ砲戦艦が2隻残っているのが救いだな」
さらにキンメルは覚悟したように続けた。
「第1巡洋艦戦隊、スプルーアンス少将に伝えてくれ。巡洋艦以下を指揮して後退せよ、と」
キンメルの言葉の意味を解し、艦橋の空気が凍てついた。
「残存戦艦はこれより、友軍の後退支援のため、殿軍を努める。
陣型を組み直すぞ!
急げ!!」
これでいい。
もう海軍に居場所はない。
そう決めたキンメルの表情は、次第に精悍さを取り戻し始めていた。
最初のコメントを投稿しよう!