撃攘

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「前衛、第16駆逐隊より入電!!戦艦含む敵艦隊接近、戦闘中!!」 通信兵の報告すると同時に前方より連続して砲声が轟き始めた。 「……奴ら、我々を徹底的に……」 参謀長ハワード少将が呟く。 「……参謀長、残存戦艦の状態は?」 キンメルが静かに口を開いた。 「戦闘可能は本艦と《コロラド》《メリーランド》《ミシシッピ》です。 《テネシー》は舵と機関をやられています、戦闘は無理でしょう。 やりますか?」 「忘れたか?奴らの戦艦は我々のものと比べると優速だ。逃げようとしても、逃げられまい。 40センチ砲戦艦が2隻残っているのが救いだな」 さらにキンメルは覚悟したように続けた。 「第1巡洋艦戦隊、スプルーアンス少将に伝えてくれ。巡洋艦以下を指揮して後退せよ、と」 キンメルの言葉の意味を解し、艦橋の空気が凍てついた。 「残存戦艦はこれより、友軍の後退支援のため、殿軍を努める。 陣型を組み直すぞ! 急げ!!」 これでいい。 もう海軍に居場所はない。 そう決めたキンメルの表情は、次第に精悍さを取り戻し始めていた。
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