撃攘

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距離20000まで近付き、回頭。 発射始め。 1隻につき片舷20本。2隻合計で40本。1個駆逐隊の発射量に匹敵する魚雷が海中へと躍り出し、夜の暗闇へと一体化しつつある海中を突き進む。 空気式魚雷と異なり、日本海軍の標準魚雷となりつつある、九五式酸素魚雷は航跡を残さない。 他国では取り扱いが困難と使用を諦めた、純酸素を使用しているためだ。 もっとも航空機が主兵となっている日本海軍でも、製造費が高くつくため、当初試作されていた61センチ口径のものが不採用。 口径を53.3センチとし、従来型の発射管及び潜水艦用としても併用できるよう改修したものが九五式として採用された。 射程、破壊力は低下したものの、それは試作型の九三式と比較すればこそ。それまでの空気式や電池式と比べると性能は飛躍的に上がっている。 砲撃を続ける米戦艦群は、命中の時まで、海中から迫る暗殺者に気付かなかった。 命中は《コロラド》に2本、《ペンシルバニア》に4本。 命中率15パーセント。 距離を考えると、かなりの好成績と言える。 《コロラド》は舵を破壊され、宿敵(ナガト)と戦う前に致命的な損害を受け、その場でただ、旋回を続ける。 そして《ペンシルバニア》は船体を各所で食い破られ、分断された。 キンメルを始め、太平洋艦隊の幕僚達がどのような最期を迎えたかは、誰も知らない。
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