撃攘

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12月15日 1800。 通常であれば、真珠湾は暗闇に溶けこみ、機械の狂奏も止み、1日の役目を終えているはずだった。 戦争中とはいえ、一部の不幸な職員を除き、大半は帰宅。1日の疲れを払拭し、それぞれの夜をアフターを楽しんでいる……。 はずだった。 しかし、昼過ぎから入り始めた太平洋艦隊からの戦況報告、いや苦戦の報告が彼等の予定を狂わせた。 当初は日本軍からの欺瞞情報かと思われた。 壊滅したと言われても、つい先日まで真珠湾に威容を浮かべていた、太平洋艦隊の雄姿を知る者としては、にわかに信じられるものではなかった。 太平洋艦隊はそれほど強大な存在だった。 しかし、艦隊からの相次ぐ悲鳴のような打電、通信が途絶する艦が相次ぎ、今送られてきている情報が真実のものであり、現実のものであることがようやく理解された。 そして基地は現在、昼間と変わらぬ様相を見せている。
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