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(しかし、本当にここまで来れるとは……)
真珠湾爆撃。
連合艦隊がマーシャル沖で米艦隊と戦っている間に、マーシャル諸島を出撃、途中潜水艦からの洋上補給を経ての、爆撃行。
その任務内容を聞いた時、指揮官である大浜は上層部の神経を疑った。
高価な機体である、一式爆艇は量産が思うように進んでおらず、昭和16年6月の時点で唯一配備されている、琵琶湖、大津航空隊でも訓練用の試作機を含めて11機しか配備されていなかったのだから。
しかもそんな困難な任務を開隊間もない部隊にやらせるとは……。
しかし、1機艦司令官である山本五十六大将の発案で、成功すれば、米太平洋艦隊の本拠地に重大な被害を与えられる、試して見る価値はあると判断された。
中島の深山が不具合続出で量産が打ち切られたこともあり、一式爆艇の量産態勢は一層強化され、作戦までには36機が揃えられた。
そして今。
マーシャル諸島ヤップ島を出撃。オアフ島北のフレンチフリゲート環礁で、6隻の伊号潜水艦との洋上補給を済ませた編隊は、真珠湾を見下ろす位置にまで到達している。
途中、機体不調で2機が引き返したが、それでも機数は34機。
全機が250キロ爆弾10発を翼に懸吊している。
「見えました!灯りです!真珠湾の灯りです!!」
操縦員、松島恭平一飛曹が叫ぶ。
「電信員!電波に変化ないか!?」
「ありません!敵は我々に気付いてないようです!!」
「では、行こうか!
全軍突撃!!」
最後まで敵に発見されず、目標が照らし出されているという、理想的な状況に、大浜は感謝した。
「それと司令宛に打電!!
『我、奇襲ニ成功セリ』」
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