撃攘

83/86
前へ
/678ページ
次へ
「第4次攻撃隊、戦果集計終わりました。 撃沈確実、重巡2、駆逐艦22。撃破確実、重巡1、軽巡1。 未帰還機は10機です」 「ご苦労。……これで終わりだね」 山本が呟いた。 追撃を実施していた1機艦は16日早朝、攻撃のため再度索敵機を放った。 しかし敵残存機動部隊は、昨夜の潜水艦襲撃の後、大幅に針路を変えたらしく、索敵機が発見を報じたのは、巡洋艦などで編成された艦隊で、機動部隊は発見することはできなかった。 できれば敵機動部隊を発見するまで粘り強く索敵を実施したかったが、それは出来なかった。 護衛の水雷戦隊の燃料が欠乏したためだった。 また5航戦の《飛龍》と《蒼龍》の魚雷庫には、後1回戦分の魚雷しか残されていなかった。 これを受け、山本は第4次攻撃を最期の攻撃とすることを決定した。 だが、悔いはない。 昨日の一連の戦闘で、連合艦隊は戦艦11隻、空母5隻を撃沈するという、かの 日本海海戦に匹敵する大戦果をあげたのだから。 昨夜の夜戦で、第2艦隊が鹵獲した戦艦(テネシー)の乗員からの情報であり、信憑性は高いはずだった。 また、山本が発案した真珠湾爆撃も首尾よく終わったとの情報が入っている。 「艦隊針路200に変更。 これより艦隊はトラックに帰還する」 「おもーかーじ!!」 青木艦長の号令が飛び、《赤城》は針路を西南へと向けた。 ふと気付くと山口、源田を始め幕僚達が笑顔を浮かべこちらを見ていた。 それを見て、山本も口元を緩め、敬礼する。 答礼の後、拍手が湧く。 (もっとも本当に大変なのは、これからだ……) しかし山本は、今はそれを口にする気には、なれなかった。
/678ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4057人が本棚に入れています
本棚に追加