撃攘

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「……我が軍の認識不足が敗因だと考えます」 言葉を選びつつ、キングは話し始めた。 「真珠湾に帰還して来た艦の乗員の話によりますと、日本機の性能、練度はいずれも我が軍よりも高かったとのことです。太平洋艦隊の戦艦は、航空攻撃になす術もなく沈められたとのことです。 連中の航空技術を甘く見積もっていた、我が軍の認識が敗因だと小官は考えます」 「我々は日本海軍を侮っていた。負けるべくして負けた。貴官はそう言いたいんだな?」 「はい……」 反論したいという気持ちはあったが、出来なかった。 室内は、再び沈黙に満たされた。 「……何が必要なんだ?」 「……は?」 ルーズベルトの言葉を、キングは理解しかねた。 「この戦争に勝つためは、何が必要だと聞いているんだ。 戦争はまだ始まったばかりだ。今さら手は引けん。 そして私も合衆国国民も、求めているのは勝利だけだ。 それには何が必要なんだ?」 ルーズベルトの言葉に、それまで青白かったキングの顔に赤みがさす。 「ありがとうございます。大統領。実は作戦から帰還したミッチャー、スプルーアンスの両提督に、今後の方針について協議会を開かせております。1週間もすれば、報告できると……」 「3日でやりたまえ」 ルーズベルトが言下に言い切った。 「それと理解していると思うが、このような事が許されるのは、今回だけだ。 次は勝て。 我々には勝利以外は必要ないのだ」 ルーズベルトの言葉に、キングの顔色は再び青くなった。
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