遊撃

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1942(昭和17)年2月4日 広島 呉 江田島に連なる古鷹山、真道山の峯は、うっすらと雪を纏い、冬の様相を呈している。 毛利、村上。戦国の幾多の水軍衆の小早船、安宅船を見守ってきた霊峰。 その瀬戸内の山々が、今見つめるは彼等の血を受け継いだ鋼の艨艟、連合艦隊の精鋭。 『マーシャル沖海戦』と公称された、昨年末の海戦以降、作戦に参加した連合艦隊の諸艦は続々と帰還しつつあり、港内はひしめく艦船で賑わいを見せている。 勝利の立役者となった第1機動艦隊も、5航戦を除く全ての航空戦隊が帰還している。 帰還が、しばしお預けとなった5航戦は、商船改造の特設空母(春日丸)(後に《大鷹》と改名)による航空機の補充を受け、引き続き米軍の動きに睨みを効かせている。 港に集う艦隊には、比島方面の攻略支援を終え帰還して来た3航戦の姿もあった。 陸軍の比島攻略は順調に進んでおり、占領した飛行場に陸軍第2飛行師団が進出。3航戦は航空支援の役目を無事に果たした。 しかし、米軍の攻撃も激しく、潜水艦からの雷撃で水上機母艦(瑞穂)が沈没。 比島より飛来した、B-17爆撃機の攻撃により重巡(摩耶)が大破するなどの被害を受けている。
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