遊撃

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「まず始めに、改善を求める意見が多かった、偵察に関する事柄から始めたいと思います。 すでに周知のことと思いますが、我が軍の偵察は水上偵察機を主に使用してきました。 しかし、今回の戦いでは、速度に勝る敵戦闘機に追い回され、投入した22航戦、8戦隊合計56機の内、未帰還8機の被害を出しています。 また、追い回された結果、敵艦隊に付随していた油槽船を敵空母と誤認するという問題も発生しております」 22航戦指揮官、篠塚少将が表情を曇らせた。 山口もそのことには気付いたが、そのまま続けた。 「これの改善案ですが、 もはや低速の水上機は偵察には適さないものと判断。 艦上機、それも出来るだけ高速のものを偵察機として使用すべきと考えます。 新機種を開発するという手もあるのですが……現在、航空審査部からの進言もありまして、愛知航空機で開発が進んでいる、新型艦爆が候補として挙がっています」 1人の幕僚が手を挙げた。 「確か愛知の新型艦爆は複座機だったと記憶しています。 零式水偵は三座機でしたが、複座機でこれまでと同じ偵察ができるでしょうか? 確か中島で開発中の新型艦攻は三座機だったはず。 こちらの方がより適しているのでは?」 「愛知機の利点は、まず戦闘機並の高速が発揮できること、運動性能も高く、急降下爆撃機として開発された機体であるため頑丈であることです。 また愛知側も、爆弾槽を改造し、燃料タンクを増加させた偵察型も設計可能だとしています。 乗員には負担となるかもしれませんが、敵情を正確に報告する機としては愛知機が優れていると思います。 新機種の開発も依頼しますが、それまでの繋ぎ役として使用するとしても、設計もより進んでいる愛知機の方がより適していると小官は考えます」 それ以上の異論はなかった。
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