末弟 麥 (バク)

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  「錆び付いて開かないなぁ」ガガガッ 看守二人掛かりでも動かない   中のに居る男が口をひらく 「なんだ騒がしい折角眠っていたのに何事だ?」 「天帝がお呼びです、外に出ていただく…がっしばし待たれよ、扉が…」 あたふた看守がしているのを見て  男は失笑しながら   「なら自らでるわ」   そう言うとすくっと立ち   手と足を繋いでいた鎖を   まるで蜘蛛の糸を   振り払うかの如く易々と   引きちぎった   「なっ何たる事    鎖を易々と…」   青ざめる看守に笑みを浮かべながら 「基より兄様に盾突く気など更々ないわ  只、無能な元老院の 爺さん達が、力あるを 危ぶんでの仕打…  まぁその内報いは、    受けて貰うかな」   そう言うと錆び付いた牢屋の扉を軽々と押し開き   服を剥ぎながら牢獄からでた。   「湯を持て、服もじゃ この哀れな出立ちでは  天帝にお目通など出来ぬわ」   用意されし衣は 白龍の鱗で作られた鎧、 鳳凰の羽をあしらった兜 それらを身に纏い  八尺はあろう剣を腰に収め さっき迄の荒くれとは思えぬ   昂揚たる姿に息を呑んだ 「さぁ兄様の元へいざ行かん」眼を輝かせ   麥は天帝の待つ天照命宮へと向かうのであった 行く手に不協和音が鳴響く事も知らずに…  
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