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「ハムレットか…」
台本を見ながら呟く
結局、辞める事を言えないまま、家に帰ってきた
俺は卑怯だ
主役に抜擢されていなかったら、劇団を辞めていたのかも知れない
でも、最後にスポットライトを浴びたいと思ってしまった
歓声をこの耳で聞きたいと思ってしまった
そんな時間なんてないのに
一刻も早くお金を作って、移植をさせてあげなければいけないのに…
だけど…
どこの若造が短時間で
数千万単位の金を作る
事が出来るんだ
現実なんて所詮そんなもの
愛している人を救う事すら出来ない無力な俺
ふと、真央の事を
思い出す
一人であんなに豪華な
マンションに住んでいると言うことは…
親がかなりの資産家に
違いない
開いた窓から風が吹き込み、机の上の台本を
めくる
「生きるべきか死ぬべきか……それが問題だ」
違うな
今の俺に相応しい台詞は「生かすべきか死なすべきか…」だよな
床に座り朝まで考える
「決めたよ…」
立ち上がり、窓を開ける
都会の夜明けは紫色
俺にはそう見えていた
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